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安倍首相の「戦後レジームからの脱却」の真の問題

 参院選開票日まであとわずか、本当はもっと候補者の動静についてお伝えしたいところですが、残念ながらなかなか情報が入りません。既に何度かご紹介している「らくちんランプ」さんのところで候補者の演説等が見られますので、ご覧いただくとよろしいでしょうが、私のアンテナではそれ以外にはなかなか入ってきません。

 実を言うと、Googleのアラートに申し込んで、本ブログ注目の候補に関するメディア報道などがあればアラートが来る仕組みを作っておいてはあるのですが、ここ数日アラートのメールが全く届きません。本ブログ注目候補に関するメディアでの報道はどうも皆無だと考えざるをえません(或いは、Googleが何か妨害している?――そんなことはないと思いますが)。

 そこで今後は、候補者の動静に関する最新情報が見当たらない場合には、復習の意味も込めて、現在の安倍政権のいったい何が問題なのかといったことを書いていきたいと思います。まず今回は、安倍首相の「戦後レジームからの脱却」の真の問題についてです。


 申すまでもなく、安倍首相の「戦後レジームからの脱却」に関しては、様々なところで様々なことが言われています。例えば昨日の朝日新聞夕刊では、評論家の立花隆氏が「戦後レジーム なぜ改変」という題で論じて、「戦後レジームを改変してしまって本当に良いのか」と問いかけています(もちろん、単なる問いかけというよりむしろ、否定的な答えを含んだ修辞的疑問だと理解するべきなのでしょう)。立花氏の論が間違っているわけではありません。全くもっともです。しかし、問題の根本はもっと別なところにあるように私には思われます。





 その「問題の根本」とは何か。その点に最も迫っているコメントとして私が見つけたのは、4月22日づけの朝日新聞に出た、若宮啓文・朝日新聞論説主幹との対談でのジェラルド・カーティス教授(米コロンビア大学)の次の言葉です。

「安倍さんが『戦後レジームからの脱却』というスローガンを掲げていることが外国でもっと知られたら、世界中にたいへんな誤解を招くことになるでしょう。民主主義国のリーダーが自分の国のレジームチェンジ(体制変革)を訴えるなどというのは、理解に苦しみます」

 これだけではやや舌足らずなので、私なりに補足すると次のようになります。

 すなわち、本来「レジーム」という言葉は、――英語の辞書を引いていただければわかりますが――政治体制ということを意味します。その「政治体制」とはより具体的には、君主制(君主のみが真の主権者であるような政治体制)、民主制、或いは社会主義体制といったもので、それ以上でもそれ以下でもありません。つまり、レジームを変えるとは、そのような意味での政治体制を変えるということなのであり、それ以上でもそれ以下でもないのです。

 ですから、カーティス教授が言わんとしているのは、「安倍首相が『戦後レジームからの脱却』を訴えるのは、民主主義国のリーダーが『我が国は民主主義体制をやめます』と言っているのと同じだ」ということなのです。これがいかに奇妙なことかは、言うまでもないでしょう。
(ついでに言うと、上の引用の中で「レジームチェンジ」という単語に「(体制変革)」という註記を付けたのはたぶん朝日新聞の記者でしょうが、この註記は不正確です。実際に英語で「レジームチェンジ」という場合には、その意味はもっとはっきり「体制転覆」というものなのです。例えばフセイン体制を崩壊させたこと、あれがまさにレジームチェンジなのです。)

 ここで、「いや、安倍が言っているのは『戦後』レジームと、戦後という言葉が付いているのであって」とおっしゃる方があるかもしれません。しかしそれは関係ないと申し上げてよいでしょう。戦後が付こうが何が付こうが、レジームという英単語は今申し上げたような意味しか持っていないのですから。

 つまり、安倍首相の「戦後レジームからの脱却」の問題の根本は、このスローガンはそのまま英語に訳すと大変なことになる、つまり英語に訳せない、国際的に見て実にみっともないスローガンなのだ、ということなのです。

 もちろん、それは安倍首相の英語力の貧困さをも証明しているわけですが、ただ、安倍首相の英語力それ自体はどうでも良いことです。首相を補佐すべき周りの人間が誰一人として、この言い方をやめさせることができないことこそが問題なのですが、しかしもし誰もやめさせられないのなら、ではどうするべきか。こういうみっともないスローガンを言う人間には、首相をやめてもらうよう、有権者が自らの良識を発揮する以外に、方法はないのではないでしょうか。

by gokenwatch | 2007-07-25 00:00 | 参議院選挙  

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